行事②
行事を成功させるための5つの条件㊤
楽しいこと
第一は、なにより子どもたちにとって楽しいものであることです。楽しいからこそやる気が出て、多少の辛さも乗り越えるエネルギーが湧いてくるものです。
本当に楽しいことは、やっている者も見ている者も楽しいと感じるものです。
楽しいから、思わず夢中になります。
楽しさで笑顔はじける子どもたちの姿を!
楽しさの質
第二に、〝楽しけりゃいい〟というものではありません。暴力や差別を容認するようなものはもってのほかですが、中身のない薄っぺらなドタバタでも困ります。教育の場にふさわしい、子どもたちが成長する中身かどうかが問われます。「楽しさ」という言葉の前に「質の高い」を付けなければなりません。
私が勤めた学校で、2年生で行うキャンプで(私の学年ではなかったので後で知ってびっくりしたのですが)、自衛隊を呼んで職業を知るみたいなことをやったことがありました。
自衛隊を全て否定するものではありませんが、キャンプに自衛隊を呼んで、子どもたちにどんな楽しさを味わわせ、何を育てたいと考えたのか、その意図が見えません。
ある学校では卒業式で、先生が指揮をして子どもたちに「君が代」を歌わせていました。これも、楽しさや教育的な意味が見えません。VTRで見た限りですが、歌っている子どもたちの表情に楽しさは感じられませんでした。
表面上は「世界の平和」などと宣伝しながら、戦争を肯定したり差別を助長したりする動きもあります。教師には、教育の場に本当にふさわしいものか、本当に子どもたちの成長につながるものか、見極める力が求められると思います。
行事を、暴力や差別を許さず、助け合い励まし合い、温かい人間らしい心のかよった文化を伝え築く場にしたいものです。
文化芸術については、子どもたちが知らないことが多いと思います。そこは、教職員の方がはるかに多様な文化芸術に触れていて、知っていることが多いはずです。子どもたちに「こんなものもあるよ」「こんな表現もできるよ」と教え、提案していく必要があります。幸い、学校の教員は全員大学卒。さまざまな素養・才能・特技をもった人たちの集まりです。加えて、教員自身もより質の高いものを探究していくことが必要でしょう。例えば私は、他の学校で行われていた〝群読〟という表現形態を知り、職員に紹介し、子どもたちに教えていきました。
創造性
第三に、行事で子どもたちが力を合わせて価値あるものを創りだすという、創造性です。
何か既成のものをなぞっただけのものとか、子どもたちが受け身に終始したものでは、行事の意味はなくなってしまうのではないでしょうか。
遠足や修学旅行で、見学する計画を自分たちで創る。学校に帰って、壁新聞を創る。
キャンプで、クラスごとの出し物(スタンツ)を考えて発表する。
体育祭で、クラスで、あるいは縦割り学級で、ダンスを創作し発表する。
等々。
行事の中に、子どもたちが自分たち独自の新しい文化を創造する活動が盛り込まれていることが不可欠です。
ある中学校の卒業式の模様をVTRで拝見しました。失礼ながら、私には無味乾燥なものに見えました。と思っていたら、卒業生代表の生徒が「答辞」でこう言っていました。「このような式を挙行していただき…(傍点、著者)」と。
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