教育思想

自治をめざすクラスづくり(92)勉強について考える②【いまこそ学校に希望を150】

勉強について考える(2)

勉強とは㊦    

林友三郎『中学生時代』(岩波ジュニア新書)より

教科書以外の本を読むことも、もちろん勉強の一つです。
N君はたいへんな本好きです。
本となると、手あたりしだい読みふけっています。
将棋に興味をおぼえると、将棋の本をお風呂の中までもちこんで読んで、お母さんに笑われたくらいです。
将棋の本ばかりではありません。
北杜夫の本にこり出すと、一日か二日に一冊の速さで、北杜夫ばかり10冊も読んでしまいます。
3年の1学期、これから受験勉強にとりかからなければならないという時期に、ビクトル・ユーゴーの名作『レ・ミゼラブル』を読みはじめました。
ダイジェスト版でなく、こまかい活字で千何百ページにもなる完訳本で読破しました。
名作と言われる作品から受ける感動は、将来、ゆたかな心の糧となるでしょう。

M子さんという、ずっと昔の卒業生もすばらしい読書家でした。
休み時間などによく文庫本を開いていた姿が浮かびます。成績は良いほうでしたが、家のくらし向きが豊かとはいえず、そのうえ、お母さんが病気でながいあいだ寝たきりでしたから、M子さんは炊事・洗濯をはじめ、長女として弟や妹たちの世話までしていました。
そのようないそがしいなかでも、ひまをみて本を読んでいたのです。

数年前、ひさしぶりに話したいということで、正月のある日、2時ごろから夜の11時近くまで語り合ったことがありました。
もうりっぱな社会人ですから、話題は仕事のこと、社会のこと、政治のことから文芸や哲学の問題にまでおよんだのですが、M子さんの教養の豊かさを、人間の真面目さに、わたしの家のものはすっかり感心してしまいました。
現在はある労働組合の書記をしているとのことでしたが、人目に立たないところで仕事をしている人のなかにも、こんなすばらしい人物がいるものです。

いますぐには学校の成績に関係のないようなことでも、自分の興味、関心を伸ばしていくと、将来には思わぬ実を結ぶものです。
ですから、自分の興味を思いきって伸ばしたらよいと思います。
本屋さん、図書館、博物館などをまわるのもよいでしょう。
野や山を歩いて自然を探索したり、名所旧跡をたずねて歴史を探るのもよいでしょう。
よけいなこととかひまつぶしのように考える必要はありません。
それどころか、それらはすべて、りっぱな勉強なのです。しかも、楽しくやれる勉強です。

一つのことへの興味は、きっと、もっと広い知識を求めたいという意欲を呼びおこすでしょうし、

自分の好きなことをきわめるためには、学校で教わる基礎的な知識もやはりたいせつなものだということがわかってくると思います。

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