理論

進路について考える(5)【今こそ学校に希望を194】

進路について考える⑤

〝社会の変化に対応する力〟?       

 いつ頃からでしょうか。以前からよく言われている言葉です。

〝社会の変化に対応する力〟

社会はめまぐるしく変化しています。
その〝変化に対応していく・適応していく力〟を育てるとは?

まず考えなければならないことは、変化した内容です。
それが、人間の道理にあっていて、私たち人類の真の幸福につながるものであれば、その変化を歓迎し、喜んでそれに応じるでしょう。
まして、その変化に自分も関与していればなおさらです。

しかし、従来言われてきた〝社会の変化に対応する力〟は、そういうニュアンスではないようです。
ここでいう〝社会の変化〟とは、国など、私たちの外の力による変化という意味合いです。

いま教育界では、いまどのような変化がもたらされているでしょうか。

国民・教職員・保護者・子どもたちの意思に反して、〝教育の危機〟とも呼べる、重大な事態が生まれています。

全国学力テストが毎年実施され、新自由主義にもとづく競争主義・序列化が強まり、子どもたちの健全な成長・発達が歪められています。
国による公立学校への統制が強まり、教育の自由が侵されています。
加えて教員の多忙化は変わらず、学校現場は疲弊しています。

社会に目を向ければ、非正規雇用が高止まり、物価高のもとでも最低賃金の引き上げは微々たるもので、日本の労働者の賃金水準は上がらず、貧富の格差が広がっています。
日本の貧困率は、先進国ではトップレベル。
教育や社会保障への公的負担は最低レベル。
軍事費は、23~27年度で43兆円、世界で5位以内のトップレベルに。
防衛予算は教育予算の2倍以上なりました。
急速に軍事大国化、戦争できる国づくりが進められています。
防衛省は、中学生・高校生を対象に自衛隊への勧誘活動を進めています。

この変化に応じて、競争に勝つ力を育てることが、本当の幸福を生むことになるのでしょうか。
軍事大国化の流れに乗って戦争できる国づくりに協力することが、本当の幸福につながるのでしょうか。

〝社会の変化に対応する〟ことは、このような危険を孕んでいると言わざるを得ません。  

その変化にたいして批判するのではなく、その変化に適応していく、ということでよいのでしょうか。        

社会を変える力! 未来を切り開く力!

社会の変化に対応するのではなく、理性と知性の力と感性を育て、真実は何か自ら見極め、何が正しいか自分で判断する自立の力を育て、誰もが平和で自由で人間らしく生きていけるよう、社会を変えていく力こそ必要ではないでしょうか。

欧州諸国並みの教員の自由が実現すれば、教科書を自分で決め、授業計画も自分で決められます。
教員が増員されゆとりができれば、毎日定時に勤務を終え帰宅し、本を読む、新聞を読むなどの時間が使えます。
子どもの権利がきちんと保障されれば、子どもたちの自治活動を広げ、校則などの見直しを進められます。

高校の希望者全入制度が実現すれば、中学生は高校受験制度から解放され、充実した中学校生活が実現するでしょう。
私たちが要求し、それが実現し変化したのであれば、その変化を活用していくことは、素晴らしいことです。

それは、〝社会の変化に対応する〟のではなく、社会を変えていくことです。

〝自分と社会の未来を切り開いていく〟ということではないでしょうか。

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