教育情勢

給特法改定案が成立【いまこそ学校に希望を204】

「働かせ放題」を温存

これでは、教員の長時間過密労働は解消されない!

6月11日、改定公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(以下「給特法」)が、反対世論が高まるなか、通常国会・参議院本会議で、自民、公明、立憲民主、日本維新の会、国民民主などの賛成多数で可決・成立しました。

改定案は、残業代不支給を継続し、教職調整額を4%から段階的に10%に引き上げるとするものです。
本田由紀氏(東京大学教授)の調査によると、小学校の教員には20.5%、中学校の教員には29%の調整額が必要です。10%引き上げは全く実態に合っていません。
給特法の廃止(労働基準法適用)、教職員の大幅定数増、欧米並みの20~25人学級の早期実現こそ必要です。

さらに改定案は、指導教諭の下に新たに「主務教諭」を新設。
教職員の間の同僚性を弱め、序列化を進めようとしています。

参議院文教委員会 参考人質疑

本田由紀氏(東大教授)の意見陳述

今法案の問題点は大きく分けて三つあります。

1点目は、根本的な法律の立て付けに関する問題です。

改定案に盛り込まれた「時間外在校等時間」という言葉が、教員があたかも自発的に取り組んでいる時間のような印象操作に使われていますが、実態は明らかな労働時間です。

その根拠に、教員勤務実態調査の結果において、自発的どころか完全に本来の業務としての仕事の時間であることが明らかになっています。
データによると、小中学校とも在校等時間は1日11時間ほどで、全て教員として必要な業務で、授業や生徒指導に関する事柄であり「自発的」という言葉に当てはまりません。

文部科学省の見解には大きな矛盾や破綻が見られます。
最高裁判決および厚生労働省のガイドラインでは、明らかな時間外勤務命令でなくても、黙示的な指示であれば労働時間であると見なされます。
自発的な業務は労働時間ではない、という文科省の理屈は成立しません。

加えて言うと、文科省は時間外在校等時間は自発的な取り組みだが勤務時間の管理対象にするといいます。
すなわち実質的な労働時間となり、管理はするが報酬は支払わないという判断をし続けている点で、今回の給特法は大きな問題を含んでいます。

2点目は、教職調整額を10%に段階的に引き上げることが法案に組み込まれ、1カ月の時間外在校等時間を30時間に減らすことを目標に示しています。
仮に30時間まで減らせても、教職調整額10%では時間外労働に対する適切な報酬額に達しません。
国が公立学校の教員に無報酬労働を強いるというものなのです。

3点目に、新たに設ける「主務教諭」の問題です。
教員間で責任や賃金の階層構造を増大させ、互いの専門性に敬意を払いつつ対等に意見を述べ、運営に参加するという学校のあり方を阻害する恐れがあると考えます。

国立や私立学校の教員には、すでに残業代の支払いがされていることを鑑みても、今法案は多数の矛盾を含んでおり、公立学校の教員の長時間労働を延命させる悪法です。
基礎定数の大幅な増加は不可欠であると申し上げます。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。