学校をどう変えるか(9)
フィンランドの教育から学ぶ㊦(前回224号のつづき)
後期中等教育
フィンランドの義務教育は2021年に延長され、すべての若者が中等教育を修了するか18歳になるまでの就学が義務付けられました。
普通高校では、数学、自然科学、歴史、芸術文化、言語、生物学、地理学、物理学、化学にいたるまで、総合的な教育が行われます。
普通高校の最終学年に全国共通の高校卒業資格試験が実施され、それに合格することで、大学、応用科学大学、職業教育機関に進学する道が開かれます。
職業専門学校では、エンジニアリング、製造、建設、経営管理、保健福祉、芸術、人文科学といった分野で、特定の職業のための教育と実践的な訓練を提供します。職業訓練を受けることで、資格を取得したり高等教育での研究などにつながります。

幅広い職業の選択肢
近年の職業教育の大規模な改革により、個人に合わせた継続的な学習、教育、個別の指導とサポートの機会が大きく増加しました。
職業教育が目指すのは、すべての生徒が学ぶ喜びを体験し、自分の居場所を見つけることです。
フィンランドの職業教育訓練の目的は、卒業したすべての若者に就職か、高等教育での学習を可能にすることです。
教育は無償なので、生徒の学力やスキルを向上させ、教育格差を縮め、教育における平等を推進するのに役立ちます。
このおかげで、学習を生涯いつでも継続できる可能性が広がっています。
横断的なコンピテンシー
世界が急速に変化するにつれて、人生と仕事の舵取りに必要なスキルも変化していきます。
生徒たちにはレジリエンス(困難を乗り越え適応して回復する力)と、学び方を学ぶスキルが必要とされています。
デジタルスキルとAI(人口知能)スキル、メディアリテラシーとマルチリテラシー、環境教育、気候変動と持続可能性、民主主義と人権、他者に敬意を表したり交流したりするスキルは、数学や美術工芸といった伝統的な科目と同様に重要です。
教科横断的なコンピテンシーは、幼児教育から高等教育までフィンランドの教育制度の一部です。
横断的なコンピテンシーの目的は、生徒の学習能力を支援し、生徒が生涯を通じて積極的な学習者であり続けられるようにすることです。
好奇心と情報収集を促進し、生徒が自力あるいは周囲の人たちと協力しながら、さまざまな形のリテラシーを駆使して自発的に行動し、批判的思考を実践できるようになることを目指しています。

横断的コンピテンシーは、日常生活をどのように管理し、持続可能な方法で生活するかなど、現実における生活のニーズや課題にも関連しています。
これらの能力の発達は、保育と幼児教育が開始するとともに、日常活動や遊びの一部分として自然に始まっています。
初等・中等教育に入ると、教科横断的な学習モデルの計画や、フェノメノンンベース・ラーニング(教科の枠を超えた「現象」を探求する教育方法)によってサポートされています。
横断的コンピテンシーの育成はフィンランドのコアカリキュラムに組み込まれています。
横断的コンピテンシーの7つの領域
- 思考、学び方を学ぶこと
- 文化的能力、交流および自己表現
- 身の回りのことを自分で対処し、日常生活を管理する
- マルチリテラシー
- 情報通信技術(ICT)に関する能力
- 職業生活に必要な能力と起業家精神
- 参加と関与、そしてサステナブルな未来の構築
※コンピテンシー competency 高い成果を出す人に共通して見られる行動特性。優れた成果に結びつく具体的な行動や考え方の傾向。
フィンランド大使館発行「フィンランドの教育」より
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