実践

学校をどう変えるか(17)【いまこそ学校に希望を234】

学校をどう変えるか(17) 

M中の不思議・その7  

「全国学力テスト」をめぐって

「分析」

今年9月、「令和7年度 全国学力・学習状況調査分析研修」という文書が公表されました。
4月に実施された国語、数学、理科の学力テスト。
M中の結果について分析したものです。

(私ははじめて見ました。前任校でも「学力テスト」は強制されて仕方なくやっていましたが、校長を含め職員の中でも批判が強く、ただやるだけでした。「分析」などやったことはありませんでした。)

教科ごとに、テスト全体の平均正答率、問題ごとの平均正答率を、県と全国の正答率と比較できるようにまとめてあります。
次のページには、問題ごとの正答者の人数が出ています。
これもまた、県・全国の分布と比較できるようになっています。

調査の母数は、M中42人、県14,315人、全国870,560人です。

国語を例に見てみましょう。

(1)最初のページは、「概要」です。

問題全体の平均正答率が、М中は50%、県は55%、全国が54.3%。
M中は、全国平均に比べ4.3%、県平均に比べ5%劣っていると示されています。

そして、M中の受験者全員42人の正答数の分布を示しています。

  14問(全問)正答…0人      7問正答 ………4人
  13問正答  ………1人      6問正答 ………7人
  12問正答  ………3人      5問正答 ………3人
  11問正答  ………1人      4問正答 ………6人
  10問正答  ………4人      3問正答 ………1人
   9問正答  ………1人      2問正答 ………1人
   8問正答  ………9人      1問正答 ………1人

平均正答率 M中 7.0/14 = 50%    県7.7/14 = 55%  全国7.6/14 = 54.3%

(2)次に、問題を学習指導要領の領域等で分類して、平均正答率を出しています。

「知識及び技能」の項目の該当する問題の正答率は、M中53.6%、県48.7%、全国48.1%。M中は、全国比5.5%優れています。 

「思考力、判断力、表現力等」のうち

  • 「A話すこと 聞くこと」に該当する問題の正答率は、M中49.4%、県53.3%、全国53.2%。
  • 「B書くこと」に該当する問題の正答率は、M中43.8%、県53.7%、全国52.8%。
  • 「C読むこと」に該当する問題の正答率は、M中60.3%、県62.8%、全国62.3%。

次に、問題を「評価の観点」で分類して、平均正答率を出しています。

  • 「知識・技能」観点の問題の正答率は、M中53.6%、県48.7%、全国48.1%。
  • 「思考・判断・表現」観点の問題の正答率は、M中49.8%、県55.9%、全国55.3%。

 次に、問題を「問題形式」で分類して、平均正答率を出しています。

  • 「選択式」の問題の正答率は、M中61.6%、県64.1%、全国63.9%
  • 「短答式」の問題の正答率は、M中66.7%、県74.6%、全国73.6%
  • 「記述式」の問題の正答率は、M中19.6%、県26.4%、全国25.3%

数学と理科でも、同様の「分析」が行われています。

これが、子どもたちを人間らしく育てることに本当につながるのでしょうか。

この「分析」がどれほどの意味があるのか、甚だ疑問と言わざるを得ません。

テストとは別に、「生徒質問紙」という学校生活についてのアンケート調査もあります。

これも、国にやってもらう必要があるのか、甚だ疑問です。
学級や学年や全校で、適宜自前で行うことではないかと思います。
私は、担任をした学級で、折に触れていろいろなテーマで、書いてもらったり、話し合ったりしたものです。

M中のデータを示すのに、「貴校」というタイトルが付いています。

この分析をM中でおこなったのではなく、どこかの業者に委託したのは間違いありません。

今年度の委託業者は、小学校はZ会、中学校は内田洋行です。
全国学力・学習状況調査に数十億円の費用がかかると言われています。

学力検査を悉皆で実施し、採点し、分析することで、毎年莫大な予算(国民の税金)を使われています。

このお金を、教育の条件整備や教員の定数増、さらなる少人数学級の実施などに使うべきではないでしょうか。

このお金と時間と手間が、子どもの発達成長を歪めるために使われているとしたら、怒りが湧き。悲しくなり、子どもたちに申し訳なく思います。
私たちがやっていることが、子どもの成長発達を歪めている?!

最初の全国学力テスト

そもそも国が全国学力テストを始めたのは、1956年。1966年まで「全国中学校一斉学力調査」を11回実施。
1960年までは学力の実態把握が目的だとして抽出で実施されましたが、1961年から中学2・3年生を対象に悉皆で実施されました。
これにたいして、学校間や地域間で競争が過熱し、子どもたちを競争に追い込むものだとして、教職員組合を中心に大反対運動が起こり、悉皆調査は1964年に中止されました。
1966年には、旭川学テ裁判の第一審で、国による学力調査は違法という判決が出されました。

競争で、子どもは育たない

新自由主義の流れが強まるなか、2007年安倍政権が、多くの反対の声があがるなか「全国学力・学習状況調査」を、43年ぶりに再開したのです。

今年度の結果についても文科省は都道府県のランキングを公表していますが、これは子どもたちを競争に追い込み、学校の序列化をすすめ、教育を歪めるものです。

競争で、子どもは育ちません。

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