富山 中学教員過労死訴訟で判決
中学教諭過労死で賠償命令=県と市に8300万円―部活の残業認定・富山地裁
富山県滑川市の市立中学男性教諭がくも膜下出血で死亡したのは過重労働が原因だとして、妻ら遺族が市と県に慰謝料や遺失利益など計約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が5日、富山地裁であった。松井洋裁判長は部活動も業務だったとして発症前1カ月の残業が119時間に上ったと認め、市と県に計約8300万円の支払いを命じた。
時事通信社:https://sp.m.jiji.com/article/show/2974100
判決によると、滑川中に勤務していた男性教諭は2016年7月22日に自宅でくも膜下出血を発症して救急搬送され、8月9日に42歳で死去。18年に公務災害と認定された。3年生のクラス担任を務め、土日もテニス部顧問としてほぼ休みなく勤務していた。
市側は「部活動は教員の自主的な活動だ」と反論したが、松井裁判長は「全ての教員が部活顧問を担当することとされており、全くの自主的活動とは言えない」と言及。発症前1カ月の残業が119時間、2カ月前は平均127時間などと認定し、「授業数は最も多く、量的にも質的にも過重業務だったことは明らか」と判断した。
その上で「校長は男性が心身の健康を損なう恐れがあると把握し得た」と指摘。負担軽減を講じなかった安全配慮義務違反を認め、発症と過失との因果関係があったと結論付けた。
判決後の記者会見で、妻は「二度と私たち家族のような思いをしてほしくない。教員は自分の働き方に疑問を持ってほしい」と涙ながらに訴えた。
滑川市の話 司法判断を真摯(しんし)に受け止め控訴しない。県とも協議しながら学校での働き方改革を推進する。
教員は〝定額働かせ放題〟
教員の長時間労働が原因の過労死や過労自殺が相次ぐ大本には、1971年に制定された給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)があります。同法3条は、教員には「教職調整額」として給料の4%を支給するかわりに、残業手当は支給しないと定めています。教員は、〝定額働かせ放題〟といわれます。
文科省の調査で中学校教諭は、8割近くが月45時間を超える残業をしています。日教組の調査で、公立学校教員の平均残業時間は、持ち帰り残業を含め、月95時間を超えます。
長時間労働解消に向けて
自民党は、教員の給料への上乗せ分を、現行の4%から10%へ引き上げるべきだという提言案をまとめました。しかし、調整額を引き上げるだけでは、焼け石に水です。岸田政権が6月に発表した「骨太の方針」では、「給特法等の法制的な枠組みを含め……教師の処遇を抜本的に見直す」と述べるだけで、具体的な方針を示していません。
給特法を廃止し、残業の対価を正しく支払わせる仕組みをつくって、長時間労働をなくし、教員の大幅増員を求める運動を広げていくことが肝要です。
コメント