実践

自治をめざすクラスづくり84 いじめ問題⑬

いじめ問題にどう取り組むか(13)

Y さんへのいじめ問題にどう取り組んだか

2月7日の話し合いをふりかえって

2月7日の話し合いは、7組を変えるほどの感動的なものになりましたが、どんな点がすぐれていたか、そして今後の課題は何か、考えてみました。

《7組のすばらしさ》
☆リーダーたちが本気になる!

あの日、これはクラスの問題だと考えた私は、まず新旧の学級委員に相談しました。そうしたら、学級委員たちが「いじめ」の問題を真剣に受けとめ、「自分たちで何とかしなくては…」と教室に向かったのです。
そして、早速その日のうちにクラスのみんなに話をし、みんなで話し合おうという方針をもったのです。
学級委員の中では、「少しずつ話し合っていこう」という意見も出たそうですが、「それではだめだ。きょうのうちに時間をかけてもやろう」という結論に達していたのです。こ
こに、リーダーたちの並々ならぬ決意がうかがえるのではないでしょうか。
話し合いでは、まず学級委員が、経過を説明し、意見を述べ、その後、みんなに発言を求めるというかたちですすんでいきました。
学級委員が終始求めていたことは、大事な問題であるということ、クラスみんなの問題であるということ、一人ひとりがどう思うか表明すべきだということです。
このようなリーダーたちの役割は、キャンプ・文化祭・体育祭・合唱祭などの行事において、生徒会役員選挙において、そして日常の話し合いや係活動などにおいて、築かれてきたことです。

☆全員の発言を求めた!

深刻な問題についての話し合いです。そんなに軽い気持ちで発言できるものではありません。
ぽつりぽつりと、自ら手を挙げて自分の思いを語り始めました。
多くの人が、そんなに大きな声ではなく、つぶやくように。
しかし、クラスの半数ほどが発言すると。途絶えてしまいました。
その時、「一人ひとり、思っていることを言うべきだ」「言った方がすっきりする」とという発言。
しかも、「手を挙げて言ってほしい」と。
学級委員も言っていましたが、指名されて言うのではなく、すすんで言ってほしいと。
なかなか言えない人が、何も考えていないのでもなく、言いたくないのでもなく、言いたいことがうまくまとまらなかったり、どう言っていいのかうまく整理できなかったりしているのだということもみんな知っていました。
「思っていることはあるはずだから」「まとまってなくていいんだから」と励ましました。
そして、勇気を出して発言した人に、あたたかい拍手を送りました。
結局、全員が、手を挙げて、自分の思いを率直に述べあったのです。

☆全員で、なんとかしようと、ホンネを出し合って!

話し合いは、3時間かかりました。その間、だれひとりとして、席を立つ者もいませんでした。
「これは大事な問題だ」と全員感じていたからでしょう。
クラス全員で、なんとかしようと考えた3時間でした。
この問題は、特定の人の問題ではありませんでした。
共通の問題について、全員が本音を出しあって話し合った意味はきわめて重要です。

☆学び合った3時間!

おたがいに、発言を真剣に聞きました。共感をあたえた発言には、拍手が送られました。とく
に、「Y さんがあたえてくれたチャンス」という丸谷先生の発言には共感が広がりました。「相談に
行ったY さんが立派だった」という発言にも。「気がついていながら、注意ができなかった弱さが
あった」という発言にも。ものの考え方について学び合った3時間でした。

☆全員で話し合った力が、行動の原動力!

全員がホンネで話し合ったからこそ、考えの違いもわかり、だからこそ共通点(何が普遍的なものであるのかということ)もわかりました。
そのことが,クラスみんなが立ち上がり行動していく、原動力になりました。
「すぐに呼ばなくちゃ」「O くんとS さんも、学校に来られるようにしよう」と、行動をおこしました。
次の日から、クラスはたしかに変わりはじめました。
仲間はずれにならないように声をかけあったり、朝O くんの家に行ったり…。

《今後の課題》
☆クラスを変える第一歩

感動的なすばらしい話し合いができましたが、これは、本当にいじめや不当なことをなくし、人間を大事にするクラスをつくっていくうえで、大きな大きな、しかし第一歩にすぎません。
話し合ったからと言って、解決したわけではありません。
一人ひとりがどう考え、どう行動するかが問題ですから。

☆自立への挑戦

この問題を、自立の課題としてとらえるなら、一つの大きなきっかけになった問題でした。
この成長の課題を、あらゆることを機会に、自覚していくことができるかどうか、この意味でも大きな第一歩となるでしょう。

☆人間のつながりをどうみるか

ホンネを出しあう=思っていることをありのままに言い合うことによって、本当に心がつながっていくということを体験したのではないでしょうか。
「こんなこと言っちゃまずいかな」「こんなこと言うときらわれるんじゃないか」などと思って、はじめから遠慮して何も言わないのではなくて、思っていることは何でも言い合う関係をつくっていくことが、問題を解決するためにも、自立の力を育てるためにも大事ではないでしょうか。

(「2年7組学級通信№ 162」1996.2.19 より)

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