理論

自治をめざすクラスづくり(115)教育の目的⑪【今こそ学校に希望を175】

教育の目的(11)

自立の力を育てる

自立の力を育てるために、中学校では9教科の勉強をして、理性と知性を育て感性を磨きます。

そして、自治的なクラスをつくっていく取り組みの中で、自立の力が育っていくということを述べました。

近年、子どもの学力が低下している、学力格差が広がっている、とくに日本の子どもは読解力が他の先進国に比べて低いということが、PISA調査からも指摘されています。

それは、教育社会学の志水宏吉氏らの調査によっても裏付けられています。(志水宏吉著『学力を育てる』岩波新書)

同書によると、「できる子」と「できない子」の二極分化が進んでおり、家庭環境と密接に結びついていると指摘しています。

同書では、「家の人はテレビでニュース番組を見る」「家の人が手作りのお菓子を作ってくれる」「小さいとき、家の人に絵本を読んでもらった」「家の人に博物館や美術館に連れていってもらったことがある」「家にはコンピューターがある」…といった家庭の文化的環境を「上位」「中位」「下位」の3グループに分け、それぞれの子どもたちにアンケート調査を行いました。

中学生の回答は、以下のとおりです。格差は歴然としています。

「勉強はおもしろい」と答えた中学生…「上位」→35.3% 「中位」→25.1% 「下位」→15.8%

「出された宿題はきちんとやる」同上…「上位」→71.7% 「中位」→67.2% 「下位」→55.9%

「嫌いな科目でも頑張ってやる」同上…「上位」→55.2% 「中位」→45.7 「下位」→34.0%

 家庭学習「しない」同上     …「上位」→31.4% 「中位」→42.9% 「下位」→57.5%

 家庭での学習時間 …「上位」→38.9分 「中位」→27.3分 「下位」→20.7分

ところが、同書によると、こうした学力低下や二極化を克服した学校があるというのです。

大阪府にあるE小学校と、兵庫県のU中学校。両方とも公立。

E小学校では、学習調査で「上位」→82.7点 「中位」→82.3点 「下位」→77.0点という結果。「落ちこぼれ」をなくしていったのです。

同書からそのまま引用します。

E小学校。

まず、彼らは、本当に外でよく遊ぶ。それは教師たちが、E小でことのほか大事にされている「仲間づくり」をおし進めていくうえで、「遊び」を重要な活動と位置づけているからである。……

第二に、E小の子どもたちは、非常によく人の話を聞く。
どの学年の、どの教室に行っても、子どもたちは教師の言葉にしっかり耳を傾けている。
それだけでなく、クラスメートが発言する時にも、しっかりと聞いている。
かりに人が発言するときにおしゃべりしている子がいれば、すかさず周囲から注意の声が飛びもする。

U中学校 

U中においても生徒たちの「集団づくり」「仲間づくり」が、徹底的に大切にされている。
学級・学校のなかに「居場所」があってこそ生徒たちの目は輝くのであり、仲間との切磋琢磨のなかでこそ彼らの学力や社会性が大きく伸びていくからである。
ある教師は、「子どもと子どもをつなぐために、教師が黒子となって汗を流す」という言葉で、U中で大事にされている「集団づくり」の核心部分を表現してくれた。

子どもは、集団のなかで育つものである。
学力も、そうだと思う。
周囲の人々との人間関係や仲間たちとの切磋琢磨を通じてこそ、学力の樹は適切に成長するものではないだろうか。
仲間がともに育ち、伸びるような教育環境を提供すること、これこそが、子どもたちの学力を育てるための基本要件だと思われる。

                      (志水宏吉著『学力を育てる』岩波新書)

9教科の学習と自治的な集団づくりが、自立の力を育て、それがまた、学力を上げる。(志水氏も言っていますが、「学力」はテストの点数だけではありません。「本当の学力」とは何かという命題もありますが…)学力が上がれば、集団の自治と文化もさらに高まる。こういう相乗作用が働いているのではないでしょうか。

家庭の文化的環境が弱ければ、学校で創っていく、補っていく必要があるのではないでしょうか。

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