教育の目的(13)
問われる大人の自立・教師の自立 ②
新型コロナウイルス感染対策の、全校一斉休校をめぐって
子どもの自立の力を育てるには、当然ですが、大人・教師自身の自立が問われます。
同調圧力が蔓延し、上意下達が徹底されている日本の社会において、教育界もまた例外ではありません。

新型コロナウイルス感染が広がるなかで、2020年3月、安倍首相は全国の小中高校に「臨時休業」を要請しました。
「要請」だったのにもかかわらず、全国のほとんどの学校が臨時休校に踏み切りました。
臨時休校の開始は、首相が要請した「3月2日から」がもっとも多かったのです。
各自治体と学校で、どれだけ真剣な議論が行われたのでしょうか?
憲法では、地方自治の本旨として住民自治と団体自治が保障されています。
それぞれの学校とその教職員が、子どもたちの命と安全と教育に直接責任を負っています。
民主主義がしっかり機能していれば、本来、学校が臨時休業に踏み切るかどうかは、それぞれの学校で決めるべきことではないでしょうか。
その地域の感染状況、学校の子どもたちの感染状況を見て、校医と相談し、感染症の専門家の意見も聞き、教職員で話し合い、校長の責任で判断すべきことではないでしょうか。
少なくとも、県立の学校であれば県で、市区町村立の学校であればそれぞれの市区町村で判断すべきことではないでしょうか。

〝右へならえ〟とばかりに、都道府県立の学校では、自治体数97.9%の学校が臨時休業を実施しました。
市区町村立学校では、小学校が98.8%の学校が(自治体数では98.6%)、中学校が99.0%の学校が(自治体数では98.7%)、臨時休業を実施しました。
休校を見送った自治体
ところが、首相の要請を丸呑みせず、自治体で判断したところもあったのです。
島根県は丸山知事の決断で、47都道府県のなかで唯一、首相による全国一律の休業要請に従わず、県立高校や特別支援学校の休業を見送ったのです。
島根県では、県内で感染者が確認されていなかったのです。
3月17日時点でも感染者は確認されず見送りは継続されました。
丸山知事は、県議会で「政府の認識は理解しつつ、生徒の学習の遅れや休校時の家庭の負担を最小限にするため」と述べ、県立高校と特別支援学校は当面休校にしないと明らかにしたのです。
小中学校は、設置者の市町村に判断を委ねるとしました。
高校入試もあり、その他やることが立て込んでいる3月。
県立高校の教職員らに安堵の声が広がりました。(「教育業界ニュース」電子版より)
丸山知事は、地方自治の本旨を守り抜いたのです。
市区町村では、家庭や教育への影響を考慮し、当面は小中学校を休校とせず授業を続ける判断をしたのは、(3月)2日の時点で7つの県の19の自治体。
小中学校合わせて295校に上りました。
栃木県大田原市は、市内の28の小中学校について保護者の負担軽減を考え、半日は授業を継続することにしました。
また、島根県は共働きの家庭などに混乱が生じるおそれがあるとして、松江市や出雲市小中学校など156校が、当面通常どおりの授業を行うとしています。
沖縄県では、石垣市や竹富町など6市町村が現時点は感染者がいないため、休校しない判断をしました。(「NHK NEWS WEB」2020.3.2 より)
コロナ禍で、マスク着用自由、すべての行事を実施
栃木県日光市立足尾中学校長 原口真一さん
コロナ禍で学校行事がつぎつぎと自粛されていきました。
私は感染症の文献を調べあげ、医者、学識者に直接問い合わせました。
「教育の質」を落とさず、子どもたちを不安から守りたかったのです。
衛生管理マニュアルを守り、過剰な忖度さえしなければ学校内でマスクが不要な場面も多いのです。
コロナ禍の2020年、2021年、運動会、修学旅行などすべての行事を実施しました。
校長の私が責任をとる、と職員に伝えています。
感染者数は、ずっとゼロでした。
アクティブ・ラーニングとは「机上の学習」ではなく、現実のコロナ対応こそ「生きる力」「最良のアクティブ・ラーニング」だったと思います。
(映画「夢みる校長先生」公式サイトより)
足尾中学校長・原口真一さんは、自ら感染症・新型コロナウイルス感染について調査し勉強し、何をすることが子どもの幸福と自立につながるかを考え、決断されました。
他から支配されず、理性と知性と感性で、何をすべきか熟慮し、実行された好例ではないでしょうか。
※学校教育法第37条4項 校長は校務をつかさどり、所属職員を監督する。
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