教育情勢

給特法改定ついて【今こそ学校に希望を206】

文科省が試算粉飾

国会審議の過程で明らかに

通常国会で給特法改定が強行されましたが、日本共産党の吉良よし子議員の追及によって、この案が文科省によって粉飾された偽りの案であったことが明らかになりました。

その中身をみてみましょう。

公立学校の教員は、給特法で月給の4%の教職調整手当が支払われる代わりに、労働基準法の残業代制度は適用されないことになっています。
自公政権も2019年には、給特法の残業代不支給制度が「学校において勤務時間管理の必要性の認識を希薄化させた」と認め、2022年の調査の結果を踏まえ給特法を根本的に見直すと述べていました。(萩生田文科相=当時)

ところが、今回の給特法改定案は、残業代不支給制度はそのままで、調整手当をわずかに上げることでお茶を濁す中身です。

文科省が、給特法改定案の根拠にしたのが、これまでの「働き方改革」の取り組みで、公立小中学校の教員の平均残業時間が2016年調査から2022年調査の間に3割も減ったというもの。
わずか6年間の取り組みで3割も減ったのだから、継続すればさらに改善されるという理屈です。
この試算が、中教審の答申に盛り込まれました。

相変わらず、長時間労働に追われる教員の実態とはずいぶんかけ離れています。
どこから、こんな試算がでてきたのでしょうか。

文科省が、とんでもない粉飾を行っていたのです。

第1の粉飾

文科省は、16年と22年それぞれの8月、10・11月期の調査結果から年間の総残業時間を推計しています。
ところが16年は10・11月期しか調べていないので、8月期のデータは存在しません。
そこで同省は06年8月期の調査結果で16年調査の8月の調査として代替させていたのです。
10年も離れたデータを合体させていたのです。

第2の粉飾

2種類の休憩時間

文科省の試算は、教員が学校にいた時間から休憩時間を引いたものを勤務時間とし、そのうち所定労働時間を上回った時間を残業時間としています。そのため休憩時間が長くなると残業時間は短くなります。

16年の教員の1日の平均休憩時間は、小学校3分、中学校4分です。ところが22年は小中学校とも23分に伸びています(ともに10・11月期の平日)。

22年の休憩時間は、休憩時間の合計を1分単位で答えさせた時間です。
教員が勤務の合間に1分でも休憩すれば、休憩時間に加算されます。

ところが16年は、1分単位で調べていません。
そこで文科省は16年の推計では、教員の1日の勤務を30分単位で記録した調査で出てきた休憩時間を用いています。
この調査は、ある30分間のなかで最も負担感が大きかった業務を1つだけ記入するというもの。
つまり30分のうち少なくとも15分程度を休憩に充てたときに初めて休憩時間として記録されます。
当然、1分単位の調査に比べると、休憩時間は大幅に短くなります。

実は文科省は、22年も30分単位の調査を実施していたのです。
そこでの休憩時間は小学校3分、中学校4分と、16年調査と全く同じです。
30分単位の調査を用いると、22年の勤務時間は小中学校とも年間80時間も長くなります。

そもそも労働基準法では、1分単位に細切れされた休憩を「休憩時間」とは呼びません。
休憩時間は労働者が労働から離れることが保障されなければならないのに、細切れの休憩では「休憩」にはなりません。
電話や来客対応が生じる環境での待機時間も「休憩」にはなりません。
学校にいる間、常に子どもや保護者、外部の問い合わせに対応しなければならない状況での細切れに待機時間は、残業時間算定のための休憩時間にはなりません。
教員からは「トイレに行く時間もない」「勤務を離れて自由に過ごせる休憩時間など存在しない」という声が寄せられています。

比較可能な16年と22年の10・11月期の残業時間を30分単位の休憩時間で推計すると、16年は約70時間、22年は約56時間になると、文科省は回答しました。

しかも22年は、新型コロナの影響で学校行事や部活動が大きく制限されていたため、残業時間が短くなった可能性があります。

他にもこんな粉飾が

▼文科省は、小学校教員の土日の1日あたりの勤務時間が16年から22年に、31分も短縮されたとしています。
ところが実際は、16年は運動会などで週末が勤務日になった日を含めていたのに、22年は勤務日に含めていませんでした。
同条件で比較すると、22年の勤務時間は2分長くなっていたのです。

文科省は、「働き方改革」で「平日・土日とも全ての職種で在校時間が減少した」と報告書で述べていますが、これも偽りでした。

▼勤務時間が最も短い8月期を加えることで、1カ月あたりの平均残業時間を短く見せる。

▼春休みも8月期と同じ勤務時間に。

 休業期はすべて8月期のデータで推計。
年度代わりで最も忙しい3月期の残業時間も、8月期と同じ時間に。

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