日本学術会議解体法を強行
学問の自由を侵し、軍事利用の危険
衆議院で与党が過半数割れしたにもかかわらず、給特法改定と、もうひとつ悪法=日本学術会議解体法(法人化)が通ってしまいました。
何が問題なのでしょうか。
そもそもこの問題は、日本学術会議の会員の任命について、会の自律性のもとに、会が選出した人を、首相が形式的に任命することになっているものを、2020年菅義偉首相が6人の任命を拒否したことに発生しました。

1983年の国会審議のなかで、中曽根首相らが「総理大臣が行う会員の任命は形式なものに過ぎない」「学術会議の推薦どおりに任命する」と繰り返し国会答弁で述べていました。
菅首相が任命拒否した理由や根拠について何ら説明もありません。
日本学術会議は、戦争の深い反省から、平和主義に徹し、政府から独立して科学の視点から真理追求し、時々の諸問題について指摘・提言を行う役割を担う機関です。
その自律性と独立性は、憲法に保障された学問の自由(憲法23条)に基づくものです。
改定日本学術会議法には、「独立して」という文言が引き継がれていません。
学問が国家権力に従わせられるということは、あってはならないことです。
日本学術会議は、科学を軍事利用することに何度も反対の声明を出しています。
2015年政府は、防衛省が大学などの研究機関に資金を提供し、軍事的な研究を委託する「安全保障技術研究推進制度」を始めましたが、これに対して日本学術会議は、大学等に慎重な対応を求めました。
その結果しばらく応募が鈍りました。
政府は2022年12月、閣議決定した「安保3文書」で防衛力の抜本的増強を掲げ、5年間で43兆円の軍拡、敵基地攻撃能力の保持などを打ち出しました。
政府は同月、「日本学術会議の在り方についての方針」を出し、「政府・産業界等と問題意識や時間軸の共有」を求めました。
政府や産業界に役立つ学問でなければならないと発想があるのです。
政府は、2015年9月に安保法制を強行し、戦争できる国づくりに大きく踏み出しましたが、学問の政治利用をきびしく戒める日本学術会議が都合の悪い存在になったのです。
私たちは、戦前の滝川事件などが戦争の先駆けになったことを忘れてはいけません。
軍事的な狙いで、政治権力が学問や科学に介入してくることは、大変危険です。

学校・教育も、その土台に学問の自由・言論の自由があってこそ、教育の自由が保障され、子どもを主人公にする民主的な教育実践が可能になるのです。
政治権力が学問・科学へ介入することを容認する、今回の日本学術会議法の強行は、学校と教育にとっても重大な危険性を孕んでいます。
(参考:日弁連憲法問題対策本部副本部長 福田護弁護士「学術会議解体法案 政権の狙い」)
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