経験談

学校をどう変えるか(12)【いまこそ学校に希望を229】

学校をどう変えるか(12)

M中の場合②

不思議な学校・その2〝合唱強化旬間〟~合唱に力を入れる~!?

合唱コンクールにしないのはなぜ?

9月末に毎年、文化祭があります。その中に「音楽会」があり、各クラスの合唱、各学年の合唱、そして全校合唱の発表があります。

各学年2クラスですので、クラス合唱が6曲、学年合唱が3曲、全校合唱が1曲、計10曲ですから、かなり見ごたえ(聴きごたえ)のある音楽会です。

多くの学校が、コンクール形式で音楽会(合唱祭)を実施しているなかで、コンクール形式で行っていないのは、勇気ある選択で立派だと思います。

私がかつて勤めていたS中もA中もずっとコンクール形式で実施していました。
プロの道への登竜門として実施されるコンクールを除いて、音楽を点数化して1位・2位…と順位をつけるのは間違っているという考え方が正しいと思います。
私は、S中でもA中でも〝合唱大会〟と呼んでいたのを〝合唱祭〟とし(この修正案はすんなり通りました)、どのクラスもしっかり声を出して歌えるようになってきたので、絶対評価にして、例えば「技能点も表現点も9割以上取れたクラスはどのクラスも金賞」、というふうにしてはどうかと職員会議に提案したのですが、先生方の順位をつけることへの拘りが予想以上に強く、「金賞は1位のクラスだけ」という意見が多かったのです。

その点では、M中の「順位をつけない」という選択は、理想的です。

ただし、「ただし」です。
私がいたS中もA中も全クラス全学年がかなり高いレベルになってきたので、「順位をつけない」ことを提案したのです。
〝評価〟というのは、なにより子どもたちを励ますためにするものです。
正直に申し上げて、残念ながらМ中の合唱は各クラスの合唱も学年合唱もみんなで歌いきるというレベルには達していません。
こういう時には、賞を出して子どもたちの励みになるようにすることも必要ではないでしょうか。
「声が出ないなあ」「男子の声が…」という声が聞こえてくるのですが、「賞を出してはどうか」という意見は全く出てきません。

合唱練習のシステムと方法?

合唱を練習する時間と場所と組織、練習方法が確立しているかということです。

場所 まず、ピアノか電子ピアノがある場所が5ヵ所か6カ所あるのでしょうか。6カ所あれば全クラス分あります。5ヵ所なら、キーボードが1台あれば全クラスできます。これは恵まれています。

私がいたA中は、全校で15クラスでしたから、ピアノのある場所が使えるのは1週間に1回ぐらいでした。私は自費でキーボードを買いました。

組織 合唱などの文化・芸術を創造する活動というのは、誰かに強制されてできるものではありません。自主的・自発的に練習していくための、子どもたちの自主的・自治的な組織が作られていなければ成り立ちません。

私は、合唱委員・指揮者・伴奏者・パートリーダーで指導部を組織し、練習を自分たちで取り組む態勢をつくりました。このメンバーは、当然立候補で決まった人で、誰よりも早く自分のパートを歌えるようにしました。パートリーダーが歌えずに、みんなに声を出して!とは言えないでしょう。練習が始まる日には、指揮者は歌詞とリズムを覚え、伴奏者は伴奏ができるようにするように夏休み中から猛練習しました。(私がいた学校では、たいてい複数の人が立候補したので、オーディションが行われました)

ところがM中では、練習が始める時に、指揮者が覚えていない、伴奏ができない、パートリーダーが歌えないクラスもあります。

練習法と時間 

練習は段階を踏んで行われます。発声の仕方、呼吸の仕方、言葉と発音の仕方、和音(ハーモニー)をつくる、正しいリズムをつくる、フレーズ感をつくる…

楽譜にA,B,C.D…と書いてあるのは練習番号、区切って練習するための番号です。

S中やA中では、およそ1カ月間、毎日帰りの会+30分ほどの練習を積み上げていきました。本番1週間前からは、始業時刻の1時間前から朝練習が可能となりました。(「朝は声が出ない」という本当のようなことを言う人がいましたが、そんなことありません。声出しを少しすれば、朝だろうが昼だろうがちゃんと声は出ます)

S中やA中では、クラスで学年合唱曲(課題曲)の練習ができたら、ピアノがある音楽室や体育館で練習します。

勉強でもスポーツでも同じです。繰り返し繰り返し練習して身についていくのです。

ところがM中では、クラスで練習できるは、朝と帰りの会でたいてい10分間。30分以上練習できた日が、学年合唱が1回、クラス合唱が1回でした。これで、合唱をつくりあげるなんて不可能です。感動には程遠い!

子どもたちは、どれだけの達成感を得られたでしょうか?

どれだけ心が震える感動を味わえたでしょうか?

合唱強化旬間とは、何だったのでしょうか?

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