教育思想

自治をめざすクラスづくり(100)勉強について考える⑨-2【いまこそ学校に希望を159】

勉強について考える(9-2)

勉学 (2)               池田晶子『14歳の君へ ~どう考えどう生きるか~』より

「勉強ができる」ということと、「賢い」ということは、違うことだとわかるだろうか。君たちが普通「あの人は勉強ができる」と言う時、たいていそれは「成績がいい」ということだね。試験でいい点をとって、いい成績をとっていると。

だけど、「賢い」ということは、そういうことじゃない。サ行二段活用を言えなくても、ローマ帝国崩壊の年号を正確に知らなくても、そんなことは全然問題じゃない。「賢い」ということは、そういうこととは全然違うことなんだ。

たとえば、この場合なら、なぜ言葉というのはそんなふうに活用するものなのか。なぜ活用することで言葉の意味は変わるのか、そういう問いをもっていることだ。問いをもって、自分で考えていることだ。あるいは、なぜローマ帝国は滅んだのか、滅ぶということは人々にとってどういうことだったのか。そういう問いをもって、それを自分で考えていることだ。教わったことについて、自分で考えていることだ。君は、授業で教わったことについて、自分で考えたことがありますか。

 文法や年号を覚えて、試験でいい点をとることなんか、その意味では簡単だ。自分で考える必要がないからだ。だから、自分で考えずに覚えただけのことなんか、試験が終われば忘れちゃうんだ。それで賢くなっているわけがないじゃないか、だって忘れちゃうんだから。

 自分で考えたこと自分の頭を使って自分でしっかり考えたことというのは、決して忘れることがない。その人の血となり肉となり、本当の知識となって、その人のものになるんだ。人が賢くなるということは、こういうことだ。言葉はなぜ活用するのか考えるということは、自分がふだん使っているこの言葉について考えることだし、ローマ帝国の崩壊について考えるということは、同じ人間としての自分の心や行為について考えることだ。すべて自分に関係のあることとして考えるということなんだ。

 君が勉強が面白くないのは、それがなぜ自分に関係があるのかわからないからだったね。だけど、この世界で自分に関係の無いことなんか一つもない。すべて自分に関係のあることなんだと思って、世界を見て、勉強するようにしてごらん。勉強することの意味と面白さが、わかるようになるはずだ。

 国語、数学、理科、社会、英語、どれも勉強することにはそれなりの意味がある。それぞれが、それぞれの仕方で、この世界のことを知ろうとして探求しているものだからだ。そして、世界に自分に関係のないことはないのだから、「世界を知る」ということは、「自分を知る」ということだ。「自分を知る」ことでこそ、人間は賢くなることができる。暗記するだけの勉強がつまらないのは、それで自分が賢くなったと実感することができないからだ。  (つづく)

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