実践

進路について考える(8)【今こそ学校に希望を197】

進路指導の内容

1.全面的発達をめざす進路指導の立場

適応、すなわち既存の選択肢に自分をあてはめていく「進路指導」ではなく、人間として全面的発達をめざす進路指導を!

そもそも、子どもの「能力」や「特性」を発達させることが可能であるという前提なしには、教育は成立しない。
それらを発達させる働きかけの中でこそ、子どもの真の特性・個性を把握することができる。
能力を固定的・先天的なものと考えるのではなく、全面的に発達・開花させようとすること、自己をとりまく環境諸条件を固定的なものと見るのではなく、変え得るものととらえさせること、そうした外的条件への働きかけの中で自己を発達させようとする子どもを育てること  ―――これらは、基本的な教育観にかかわり、教師の立場にかかわることであるが、進路指導においても根本問題であろう。(全国進路指導研究会編『現代の進路指導』)

教育課程全体の中に、教科指導、生活指導と別に「進路指導」という領域があるのではありません。

子どもを社会へ送り出す準備をするのが教育の役割ですから、教育=進路指導といってもよく、教科指導、生活指導を含め、あらゆる機会をとらえて、自ら進路をきりひらく力をつけるために、進路指導が計画されなければなりません。

2.進路指導の内容

  • 基礎学力、基本的生活習慣と自主性を育てること。
    ―――人間らしく生きていくための基礎中の基礎ともいうべき諸能力を育成。
  • 社会と自然にたいする正しい認識を育てること。
  • 正しい人間観、能力観、発達観をもたせること。(教師自身のそれもためされる)
    相対評価、偏差値などにとりかこまれた「進路指導」体制によって育てられた人間観、決定論的能力観との意識的なたたかいが重要
  • 自治能力を育てるとともに、仲間を愛し、信じる心を育て、連帯によって生まれる力の大きさを実感させること
    日本の進路も、その中に生きる子ども一人ひとりの進路も、働く国民の連帯の力によってしか切り開かれない。
  • 労働と生産の社会的役割と人間形成とのかかわりを教える。
    現代の資本主義社会では、企業の利益に奉仕させられ、人間疎外が進行し、「労働」が食わんがための苦役になっている面もあるが、労働による生産が社会を維持発展させていく根本であることを認識させること。
    労働に自覚的にとりくむ中で喜びを感ずる人間にまでどう高めるか。
  • 現代の社会における女性の問題への正しい認識をもたせる。
    男女差別が依然として根強く、「結婚による幸福な家庭生活」を目標としたり、「女のしあわせ」を男性や子どもとのかかわりの中だけでつかもうとする傾向が依然としてある中で、女子が真に自立していく力をどう育てるか。
    男女の真の愛情とはどんなものか。
    幸福な家庭生活はどんな条件があって成立するものなのか。
    ジェンダー平等をどう実現するか。
  • 勉強を自覚的、目的意識的なものにさせ、生き方・進路と正しく結合させる。
    やらされている、やらざるを得なくなっている、入試に合格することを自己目的化している…という現実もあるが、将来について人間としての目標をもち、その実現をめざして自己の能力を育てていこうとする目的意識性が必要である。
  • 進学・就職など、生徒の具体的な進路をきりひらく力を育てる。
    子どもの心身の発達状態、家庭環境、経済的条件に即した高校選択、職業選択のために必要な情報提供を丁寧に。

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